原野商法

【事例】
 ある日、A社からアンケートのハガキが届き、アンケートに答えたところ、一週間くらいして、温泉旅行が当たったので行きましょうと電話がかかってきた。
 旅行先で懇親会になって、A社から、近くにリゾート施設が建つから将来性があり、銀行に預けておくより遥かに有利だ、5年後には転売してやるなどと盛んに北海道の土地を買うように勧められた。3〜4時間にもわたって執拗に勧誘されるし、温泉に招待されているという弱みもあって、つい一区画330平方メートルを300万円で買うことになってしまった。
 1年経って、A社に電話したところ、所在不明だった。そうしているうちに、さらに1年くらい経って、全く見ず知らずの大阪のB社から、前に買った土地を450万円で転売してやるという話しが来た。話しを聞くと、売るにはまず土地の面積をはっきりさせなければならず、前に買ったとき入れた木杭はもう腐っているので、新たに測量しなおさなければならないと言われた。測量費は70万円くらいかかるらしいが、それで土地が高く売れるなら良いと思い、測量を頼み70万円を渡した。
 B社からは測量図が送られてきたが、転売するという約束の期限になっても、一向に約束を守らず、ずるずると延ばされている。どうしたらよいのだろうか。

【解説】
1 利用価値の乏しい土地をあたかもすぐに値上がりするかのようにだまして何十倍、何百倍の値段で売り付けるもので、原野商法と言われる。
 原野商法の被害者に対して、その土地を転売してあげる等と言って勧誘し、更に測量費・広告費・保証料名目で数十万円〜数百万円を出させて、二次被害に遭わせる悪質商法もある。
 原野商法の被害にあったかを見極めるには、固定資産税評価証明書の金額から時価を推定し、売値との差額から判断するのが簡単である。
2 宅地建物取引業37条の2の規定によるクーリングオフの適用を検討する必要がある。
 また、同法27条・64条の7による営業保証金や営業業務保証金の還付を受けることにより、損害の填補が可能である。
3 A社の説明は、不動産売買契約の重要事項に関する不実告知(虚偽説明)であるから、消費者契約法4条1項により取り消せる。但し、誤認に気付いたときから6ヶ月または契約時から5年を過ぎると取消権は行使できない(消費者契約法7条)。
B社の説明も同様に不実告知で取り消せる。
4 更に、暴利行為による公序良俗違反、錯誤無効、詐欺による取消などが考えられる。
 不法行為による損害賠償請求も可能であり、その場合は代表取締役や担当セールスマンも相手方にしうる。

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士(さむらい)商法

【事例】
 勤務先に○○協会というところからダイレクトメールが送られてきた。興味もないので、開封せずに放っておいたところ、しばらくして同協会から電話があり「資料をお送りしたが読んでもらえたか。今日が締切日であなたが申し込めばちょうど定員になる」「受講すれば、経営法務士の資格が所得できる」「経営法務士は国家資格になる予定です」等と、資格がいかにも公的なものであり、需要が多いかのような説明をくどくどと始めた。仕事中でもあり面倒にも思ったので、断るつもりで「結構です」といって電話を切ってしまった。
 ところが、数日後に○○協会から書籍小包が送られてきて、申込金(受講料、テキスト代を含む)として14万円を請求してきた。申し込んだつもりはなかったので同協会に苦情を言ったところ、「電話で結構な話だと返事をしたから、コンピューターに登録してしまった。今更取り消すことはできない。料金をはやく支払うように」と取り合ってくれず、会社の上司にまで中傷の電話をしてくるので困っている。

【解説】
1 士(さむらい)商法とは、受講により私的資格を与えるとして、申込金や受講料を支払わせるもので、書籍の購入とセットになっている場合がある。
この取引は特定商取引法2条4項の「指定役務」のうちの「知識の教授」に関する取引である。
2 本件のような電話勧誘販売にも特定商取引法の適用があり、契約内容を明らかにする法定書面を受領して8日を経過していないならばクーリングオフを行なって契約を白紙にすることができる(同法24条1項)。
3 経営法務士が将来国家資格になる予定はなく、これは重要事項に関する不実告知と言え、消費者契約法4条1項により取り消せる。
4 なお、そもそも契約不成立の主張が可能である。更に、詐欺による取消や錯誤無効も主張しうる。