ネガティブ・オプション(送り付け商法)
【 事例 】
家族の誰も注文したことがないのに、突然、知らない業者から百科
事典10冊が郵送されてきました。この商品とともに、8万円の請求書と振込用紙が同封されていて、送付案内には10日以内に支払うよ
うにとの記載がされていました。しかも、そこには、購入の意思がな
い場合は、10日以内に返送しなければ購入したものとみなしますと
の記載もあります。 百科事典を返還しないと代金を支払わなければならないのでしょうか。
【 解説 】
1.消費者が注文をしていないのにもかかわらず、商品を一方的に送り付け、送り付けられた人がその商品を購入しない旨の通知や返品をしないと、購入の意思があると決めつけて代金の請求をするといった販売方法をネガティブ・オプション(送り付け商法)といいます。業者からの商品の送付は、売買契約の申し込みにあたるので、送付を受けた者が承諾の意思表示を示さない限り契約は成立しないし、代金の支払い義務もありません。
2.特定商取引法59条では、商品が送付された日から14日間、または業者に商品の引き取りを請求した場合は、その請求日から7日間のいずれか早い方が経過した後は、業者は商品の返還請求権を失うとされています。この期間内は、商品の所有権は業者にあり、送られた側は、商品の処分はできません。この間は、自分の物と同様の注意義務のもとに保管しておくことが必要です。
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デート商法
【 事例 】
独身寮に住んでいる20歳の看護婦Aに、B社の若いセールスマン
Cから電話があり、アンケートに答えてほしいというので回答しまし
た。 CはAと同郷だと言って、その後電話がかかり、喫茶店に呼び出さ
れて2時間ほど話をしました。二度目のデートの日、Cは「君は着物
がよく似合う。B社は今、着物の展示会を開いている。誰でも見られるわけではなく、特別の顧客を相手にしている。今日は僕の知人とい
うことで特別に連れていってあげる」と言って、Aを展示会に連れて行きました。そこでCはAに、「君はこの着物がよく似合う」、「市価200万円はするが今日は100万円でいい」、「現金がなければクレジットも組める」と執拗にすすめて、結局Aにクレジットで着物を買
わせました。 その後は、Cからは何の連絡もなく、必要でもない着物と信販会社
に対する債務だけが残っています。
【 解説 】
1.相手の恋愛感情を巧みに利用して高額な品物を契約させる商法をデート商法(恋人商法)といいます。きっかけや商品の販売目的を隠して接触してくるところは、アポイントメント・セールスやキャッチセールスと同様の形態ですが、この商法では言葉巧みに相手の異性に対する感情を利用して、着物、アクセサリー、絵画等の高価な商品を買わせることを目的にしたところに特徴があります。
2.特定商取引法第9条による8日間のクーリング・オフが適用されます。
3.展示会場で退去する旨の意思表示をしたにもかかわらず強引な販売方法が用いられた結果、困惑したあげく不本意にも契約させられた場合には、消費者契約法4条3項の不退去と困惑行為に該当するものとして取り消すことが可能と考えられます。
4.販売員と販売店の関係、販売員の言動などの販売方法如何によっては、公序良俗違反による無効、詐欺による取消、錯誤による無効、不法行為責任等による被害回復の方法も考えられます。
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エステ・トラブル
【 事例 】
「痩身モニター募集中、モニターになると通常9万3000円の1
2回の痩身美容速成コースが5万3000円で受けられます。痩せた
ら二度と太りません。ただ今キャンペーン中、一度お電話を」という
エステティックサロンの新聞チラシを見て問い合わせをしました。
「速成コースだけで10キロ痩せた人もいます。一度無料カウンセ
リングに来ませんか」と誘われ、翌日サロンに出かけました。痩身美
容の方法やモニターなどについて説明を受けて、とりあえず速成コー
スを申し込もうとしましたが「あなた場合、12回では不足なので5
0回コースにしましょう」と強引に説得されて、50回コース32万
円のクレジット契約をさせられてしまいました。8回ほど通いました
が、効果が全くないので解約できますか。
【 解説 】
1.1999年に訪問販売法(現「特定商取引に関する法律」)が改正され「特定継続的役務提供」に関する規制が設けられました。規制内容の主なものは、書面交付義務、誇大広告の禁止、8日間のクーリング・オフ、中途解約の自由と中途解約する場合の解約手数料の上限の制度です。サービスの提供を受けてみたら、説明や期待していたものとは違っていたという場合には、消費者は、いつでも自由に中途解約することができます。その場合、事業者は、提供したサービスの対価と相当な範囲の解約手数料しか請求できません。
2.業者から説明がなされたサービス内容や質が事実と異なり、消費者が誤認して契約した場合は、消費者契約法4条1項により取り消すことが可能です。
3.誇大な広告、セールストークが民法上詐欺や錯誤に該当すると考えられる場合があります。
4.提供された役務が粗悪な場合、債務不履行による契約解除と身体的被害等に対する損害賠償請求の請求も考えらます。
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